文化財解説文 |
当社叢のブナ林は標高250~315mに分布し、その下限は極めて低い。ブナの分布は奥の院直下の参道南斜面と、奥の院後方の南斜面および中印(中院)への稜線のみに限られている。このブナ林は県境の多雪地帯のものに比し、樹高も高くよく成林している。幼木も多いが目通り2m以上のものが100本を数え、中には胸高直径1.5mに達する巨木も見られる。ブナ林の組成としては、第一層にブナ、アカシデ、ブナ、スギがあり特異な様相を示している。また、林床も県境周辺部のものが裏日本側型を示しているが、ここのブナ林では一定の組成を示さない。これが他に類例の少ないブナ林の特徴であるかもしれない。主な木本としては、ブナ、アカシデ、アズキナシ、コシアブラ、ミヤマガマズミ、リョウブ、オオバクロモジ、ツクバネウツギ、ヤマモミジ、コマユミ、スギ、アカマツ、ヒノキ、シラカシ、ヤブツバキ、ヒサカキ、ユキツバキ、ヒメアオキ、エゾユズリハ、ヤブコウジ等の落葉高木低木、針葉樹、常緑高木低木が見られる。現存した原因は、おそらくブナ林が神域にあり1,300年もの間、霊地として信仰の対象となり「入らずの森」として村民によって保護されたことは、既にその社叢内に天然記念物として県指定の「大杉」と「ぜんまい桜」が現存している現況から見ても推察される。当社叢のブナ林は面積は小さいが、原生ブナ林としては学術上価値が高いので天然記念物として保存する必要が認められた。 |