
文化財解説文 | 吊耳をつける一方で足をもたない形式の鉦鼓で、吊り下げた状態で叩き念仏を唱えたもの。笹谷区(旧篠谷村(きゅうささだにむら))の六斎念仏(ろくさいねんぶつ)で用いられたものである。
鋳造および鋳離(いばな)し後の仕上げは丁寧で、内面にも鋳肌(いはだ)は残さず平滑に仕上げる。地金はやや白味を帯びた銅色で、表面の全体が黒味を帯びた古色を呈する。 撞座(つきざ)には、細かな打痕が多数見受けられ、本体の耳には太い撚り紐の吊紐が残り、また結びの一方から細い撚(よ)り紐(ひも)を介し木製の撞木(しゅもく)が伴う。両者ともよく使い込まれ、当区六斎念仏における鉦鼓の用い方を知る上で貴重である。 左側側面に「法阿弥陁佛(ほうあみだぶつ)」、頂部に「應長元年(1311)十一月日」と流麗な書風の銘を刻む。形状からして同年に製作されたものとみてよく、念仏用鉦鼓として県内最古の伝存作例である。加えて、中世における若狭各地の六斎念仏の存否については史料を欠き不明な点が多いが、本品は中世若狭の念仏宗(ねんぶつしゅう)の動向を示唆する歴史資料としての価値も大きい。 |
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